琵琶湖疏水と紅葉の京都サイクリング

琵琶湖疏水と紅葉の京都サイクリング大津から京都へ流れる琵琶湖疎水。歴史と紅葉に彩られた京都の風景をたどる自転車散歩

走行日 2010年11月27日(晴)
走行距離 37 km
使用した愛車 バイクフライデー・ポケットロケット
コース概要 JR大津駅→琵琶湖→琵琶湖疏水取水口→琵琶湖疏水第一疏水→大津閘門→三井寺→第一トンネル→小関峠→第一竪坑→第二竪坑→諸羽トンネル→東山自然緑地→毘沙門堂門跡→安祥寺川→山ノ谷橋→第二トンネル→日ノ岡第11号橋→第三トンネル→日脚山→日向大神宮→蹴上インクライン→琵琶湖疏水分線→南禅寺の水路閣→高徳庵→禅林寺→哲学の道→天下一品総本店→高野川→松ケ崎浄水場→賀茂川→琵琶湖疏水本線→夷川発電所→平安神宮→南禅寺船溜まり→ねじりまんぼ→蹴上発電所→白川→塩小路橋→JR京都駅

時は明治。
首都が京都から東京から移ったあと、京都の人口は激減し産業も衰退。海から遠いため新規の産業育成もままならない・・・。そんな状況から一発逆転するべく第3代京都府知事「北垣国道」氏が考えたのが、琵琶湖の水を京都に引いて水運を発展させるとともに農・工業のための灌漑、そして上水道・動力まで賄っちゃおうというビッグな計画!

それが「琵琶湖疏水」!!

1885年に着工し1890年に完成した第一疏水の工事には多額の費用と当時としては最新の土木技術がつぎ込まれましたが、その後の京都の発展にはなくてはならない水路となり、今でも蹴上、新山科、松ヶ崎、山ノ内の浄水場は琵琶湖疏水から取水しているなど100年以上の大活躍。

前回、琵琶湖を1周した際に琵琶湖疏水の存在に気がつき、「水路マニア的にはすぐに見たい!」と思っていたのですが、「そうだ、京都いこう」のフレーズを思い出し京都の紅葉観光をかねて探索してみることにしました。

琵琶湖疏水は琵琶湖の南側(滋賀県大津市三保ヶ崎)で取水し滋賀県から京都府へと流れています。
そこで取水ポイントから流れとともに走るべくJR大津駅までやってきました。
琵琶湖を走ったときにもスタート地点としたJR大津駅。周りの木々が色づいてちょっと雰囲気が違う。 大津駅からまっすぐ坂を下って琵琶湖までやってきました。消防艇が放水中~ 琵琶湖沿いを反時計回りに1km程進むと琵琶湖疏水の取水口が見えてきます

琵琶湖には沢山の川が流れ込んでいますが、流れ出ているのは瀬田川と琵琶湖疏水の二つだけ(琵琶湖疏水は人工的に掘られたものなので、もとは瀬田川だけでした)。ここがそのうちの一つだと思うと感慨深いものがあります。

流れの始まりをじっくりと堪能するべく付近を探索(笑)
取水口の隣にはなんだか京都っぽい造りのお宅が並んでました。船宿かな? 新三保ヶ崎橋から琵琶湖方面を眺めてみる。この水が京都まで運ばれて行くんですね。 新三保ヶ崎橋には第一疏水と刻まれた銘板が!

「第一疏水」と書きましたが、琵琶湖疏水には1890年に完成した第一疏水と、その後の水需要に対応するために1912年に増設された第二疏水の二つの流路があります。このうち第二疏水は汚染を防ぐために全面暗渠(っていうかほぼトンネル・・・)となっているため、今回は明治の面影を見ながら走ることができる第一疏水の流れを追いかけることにします。

新三保ヶ崎橋で国道161号の下をくぐると、すぐ目の前に大きな施設が見えてきます。
琵琶湖の水位が下がったときにポンプで水をくみ上げるという琵琶湖第一疏水揚水機場 揚水機場の裏にある小さな橋。よく見ると橋台が煉瓦積み。 そして流れる琵琶湖疏水。護岸はなんと全面石積み。いいねぇ、雰囲気ある水路ですよ~
そのまま流れに沿って進むと、これまた良い感じに古ぼけた水門が現れます。
これは「大津閘門(おおつこうもん)」といい、パナマ運河と同じ方法で水路と琵琶湖の水位差を調整しつつ船が出入りするための設備です。
大津閘門。舟が出入りするのは左側。右側は制水門。 60万本の煉瓦が使われたという大津閘門。赤かった煉瓦が真っ黒になっている辺りに歴史を感じます。 全体的に曲面を活かしたデザイン。非常に美しい。

なんて言ったらいいのかわかりませんが、明治頃の建築物って曲線が美しいと思いませんか?
最近の建物もかっこいいけど、明治頃の「なんとなく余裕ある感」が漂うデザインの方が好きなんだよなぁ、僕。

さて、引き続き琵琶湖疏水を・・・
と行きたいところですが、ここでいきなり寄り道です~
紅葉スポットとして有名な三井寺にやってきました。入場料が500円かかりますが中の紅葉はすばらしいので一見の価値有り 三井寺の総本堂「金堂」中には本尊「弥勒仏」の他たくさんの仏像が奉られています。 このすばらしい紅葉!もうここで終わりにしようかと思ったくらいw

三井寺の中もじっくり見てきたのですが、ここに書くとただでさえ長い今日のツーレポが大変なことになりそうなので、ここではサラッと流して後ほど別記事で紹介したいと思います。

三井寺の紅葉を堪能して再び琵琶湖疏水に戻ると、すぐに第一トンネルの入り口が見えてきます。
第一トンネルは完成当時で日本最長&竪坑を使って掘られた日本で最初のトンネル。琵琶湖疏水に当時の最新技術が惜しげもなく投入されたことが分かります。
両岸は桜並木になっていて、今は枯れ枝ですが春はすばらしい景色が楽しめそう。 昔の水路とかってこんなふうに形状に凝ってるのが良いんですよね。 小関峠に向かう途中にある長等神社の朱色の門と赤い紅葉がとてもキレイでした。

↑の第一トンネル入り口には扁額(上についてる額というか表札みたいなもの)がついてて、「気象萬千」と書かれています。
じつはこれ、かの伊藤博文氏の揮毫によるもので「様々に変化する風光はすばらしい」という意味だとか。

さて、疏水の流れは暗渠となり山を抜けていき、一方僕は峠越えとなります。
これから越える「小関峠」は古くから京都と北国街道を結ぶ間道として利用されてきた約4kmの峠道。京都から三井寺への参拝によく利用されたとか。

疏水の左岸(下流に向かって左側)を山にぶつかるまで進んでT字路を左折。長等神社の前を通り過ぎてさらに突き当たりを右折すると小関峠に向かう道になります。
小関峠に向かう角には石造りの道標が立っています。右に行くと小関峠~ 小関峠は短いながらも結構な激坂。ヒーコラいいながら登り切ると峠には「峠の地蔵さん」が待っていました。 峠を越えてすぐのところにある分かれ道。琵琶湖疏水へはこの分岐を左に行きます
上の分岐ですが中央に案内看板がありますので、それに従う形で左へ。
この道、すごく急で細い上に路面状態が悪く「登ったらものすごくきつそう」なのですが、坂の途中で面白いものがみれるので行かないわけにはいきません。
こんな感じの細い小径。超激坂なのでホント下りでよかった。 そして登場するのがこれ!これは琵琶湖疏水第一トンネルを工事した際の竪坑なんですよ~ 坂を下りきったところには小さなお堂があり、近所の方がお参りに来てました。

↑の竪坑、無造作に放置されてる感満点なのですが、実はかなり凄いものです。
琵琶湖疏水第一トンネルは当時としては日本で最も長い(2436m)トンネルでした。このトンネルを素早く掘るために作られたのがこの第一竪坑で、トンネルを山の両側から掘り進むほか竪坑の中からも両側に向かって掘ることで工期の短縮を図った、と。

現在、地上に見えているのは直径5m高さ2mほどなのですが、琵琶湖疏水は地下45mを流れているというからまたビックリ!

第一竪坑の興奮冷めやらぬまま小関峠の坂を下り終えましたが、さて、琵琶湖疏水はどこに?
目の前をキレイな川が流れてるんだけど、これは疏水じゃないと思うし、とはいえ案内看板もない。困ったときは水路マニアの勘を信じるんだ!

で、向かって左側(さらに坂を下る方)へフラフラ~、と。
先ほどのキレイな小川の流れに沿って進みます。水は高いところから低いところへと流れているはず! そして少しずつ増えてくる住宅の隙間に、「それ」は有ったのだ・・・ 琵琶湖疏水第二竪坑登場。先ほどの第一竪坑よりも細くて背が高い!

第二竪坑は第一竪坑のように資材の搬入&掘削を目的としたものではなく、主に空気の取り入れと明かり取り用なので、こういった形状をしているらしいです。第二竪坑は民家の庭の奥にあるので近づきづらいのですが、今回はたまたまお宅の方が外にいたので、お願いして見せて貰いました。

第二竪坑は発見できたものの、琵琶湖疏水はまだ姿を現しません。
さらに小川の流れに沿って進んでいくと・・・
キター!真っ赤な紅葉に彩られた大きな水路。琵琶湖疏水と再会です。 こちらが第一トンネルの出口。入り口の揮毫は伊藤博文でしたが出口は山県有朋!すごいそうそうたるメンバー!! 角度を変えて出口の上から眺めてみた。

第一トンネル出口には「廓其有容(かくとしてそれかたちあり)」と書かれています。
「悠久の水をたたえ,悠然とした疏水のひろがりは,大きな人間の器量をあらわしている」という意味らしい。

余談ですが、チリの落盤事故が記憶に新しい今日この頃ですが、琵琶湖疏水の建設中にも落盤事故が発生し65人の工夫が生き埋めになってしまいました。幸い3日後全員無事に救出されたわけですが、全国から大量の見舞金が集まり盛大な祝宴が開催されたとかされていないとか(笑)

再び地上に現れた琵琶湖疏水は美しい紅葉の中を緩やかに弧を描きながら流れていきます。
何気なく掛かっている小さな橋。しかしよく見ると煉瓦造でオシャレなデザインの橋台が! もうね、最高ですよ、この世界は。ゆったり流れる水路。色づく紅葉。そして青空。 今日ほど日本人で良かったと思ったことがあっただろうか!

この辺りの疏水沿いには遊歩道が整備されており、車もこなくてホントのんびりと紅葉を楽しむことができます。
あとで書くように京都市内は観光客で凄いことになっているのですが、ちょっと離れた場所にこんな穴場の紅葉スポットがあったとは!って感じ~

しばし流れを楽しんできましたが、ここで琵琶湖疏水の流れは広々とした「四ノ宮船溜」に到着。
そして、その先に再びトンネルが見えてきます。
琵琶湖側から数えて二つ目のトンネル「諸羽トンネル」。なぜ第2トンネルではないのか? 諸羽トンネルの南側にある東山自然緑地はかつての琵琶湖疏水の流路だそうです。 こちらが諸羽トンネルの出口。水路の直上に民家が建っているのがすごい。こちらも船溜で広くなっています

もともとこの場所を流れる琵琶湖疏水はトンネルではなく諸羽山の山裾(現在の東山自然緑地)を流れていました。
なので当初でいうところの「第2トンネル」はこの場所には存在せず、次に現れるのが第2トンネルなんですね。どうりでトンネルのデザインも他と違ってシンプルなわけだ。

諸羽トンネルは520mと比較的短くてまっすぐなので、↑の写真のように反対側の明かりが見えるのも面白いところ♪

再び琵琶湖疏水と出会ったのでこのままどんどん下っちゃうよ~と行きたいところですが、ここで本日2つ目の紅葉スポット「毘沙門堂門跡」に寄り道していきたいと思います。
諸羽トンネルを出てすぐのところにある安朱橋で琵琶湖疏水と分かれて北へ進むと、 突き当たりにキレイに紅葉した山が見えてきます。こちらが毘沙門堂門跡。 毘沙門堂。拝観料が500円かかるけど中に入るほどのことはないだろうと、今回はパス。
だって、外側の紅葉だけで十分キレイなんだもん♪ 地面に落ちたモミジの葉がまた風流な感じで~ さすが有名な紅葉スポットは紅葉の密度が違いますね。

毘沙門堂門跡、さすがに有名な紅葉スポットということで人が多かった・・・
(いや、まぁ、このあとの京都市内に比べれば全然空いてるんですが。。。)

紅葉を十二分に満喫したので再び琵琶湖疏水の流れに戻ります。
戻ってすぐのところで、うむむ。なんか疏水の下を別の川(安祥寺川)が流れてるぞ!ってことで覗いてみたら総煉瓦造の美しすぎる立体交差! そしてまたゆったりと流れていくのです。 日蓮上人ゆかりのお寺「本圀寺」へ向かう本圀寺正嫡橋。紅葉と朱色の橋の組み合わせがイイ!

秋の琵琶湖疏水、すばらしいの一言ですよ。ホント。
もし、関東のみんなが秋に関西に来るなら是非琵琶湖疏水を!と強くおすすめしちゃうくらい(笑)

京都市内と違って空いてるし、明治時代の雰囲気をそこかしこに残している琵琶湖疏水の流れは素敵だし、なにより色とりどりの紅葉が楽しい気分を増幅してくれます。ホントはもっとたくさん写真撮ってる(帰ってみたらなんと500枚もあったw)んですが、これ以上載せると重くなるので、この楽しさは現地で体験してください♪
美しいS字を描きながら流れる琵琶湖疏水。あえて真っ直ぐ作らないということころがいいんだよね ときおりモミジが疏水の上まで張り出してて、これがまた絵になるんだ~ こちらは日本最初のコンクリートアーチ橋「山ノ谷橋」。何気なく掛かっている小さな橋ですが当時の最新技術です。

琵琶湖疏水には日本で最初とか日本でもっとも○○とかそんなものがたくさんあります。
ホント、当時の最先端技術を結集した一大事業であったことが伺えますね~

山ノ谷橋を過ぎたら第二トンネルまではすぐそこ!
こちらが第二トンネル。入り口側には井上馨の揮毫で「仁以山悦智為水歓(仁は山を以って悦び智は水と為るを歓ぶ)=仁者は知識を尊び知者は水の流れをみて心の糧とする」とあります よく見るとトンネルの内壁にロープのが付いています。これは流れに逆らって舟が登るために使うもの。 こちらが第二トンネル出口。西郷従道の揮毫で「随山至水源(山に随いて水源に至る)=山にそって行くと水源にたどりつく」とある

やっぱり明治時代に造られたトンネルはかっこいいですね~。昭和になって作られた諸羽トンネルとはひと味違う。

第2トンネルの部分も小さな峠を登って迂回する形になっています。
トンネル入り口の左岸を上っていくと小さな住宅街になっているので、少しだけ住宅街を走って右折する道が見えたところで曲がれば、第2トンネルの出口となります。
第二トンネルを出たところにある新山科浄水場の日ノ岡取水場。第三トンネルはすぐそこ! 第三トンネルの手前に何気なくかかる「日ノ岡第11号橋」。なんと日本で最初のコンクリート橋なのです 橋のたもとには「本邦最初鐵筋混凝土橋」と書かれた大きな碑があります

話がややこしいですが、この手前にあった山ノ谷橋(明治37年竣工)は「日本で最初のコンクリートアーチ橋」、ここにある日ノ岡第11号橋(明治36年竣工)は「日本で最初のコンクリート橋」です。

橋の構造はよくわかりませんがアーチかどうかの違い(笑)

明治36年というと西暦1903年。
なんと今から100年以上前にかけられた橋なんだよな~と、しみじみ考えながら前方を見ると琵琶湖疏水第3トンネルはすぐそこ。
こちらが第三トンネルの入口。揮毫は松方正義で「過雨看松色(かうしょうしょくをみる)=時雨が過ぎるといちだんと鮮やかな松の緑をみることができる」と書かれています この小さな案内看板に騙されたせいで、このあと大変なことになります・・・。だって南禅寺と蹴上げはこっちって・・・ なんじゃこりゃ~!ここを自転車でいくのか!?

第三トンネルを迂回する方法は、トンネルの西側を走る三条通を迂回する方法が一般的だと思うのですが、なぜか第三トンネルのところには↑のような小さな看板があり、「山の方へ行くべし」と言っています。

いや、これ、どう考えてもおかしいでしょ?
と思ったのですが、なぜか興味をそそられそちらへ・・・

そしたら案の定というかなんというか、ってか登山道じゃん、コレ!!
おかしいと思ったんだよね~、入り口からして自転車に乗れないような砂利道だったし

しかし、乗りかかった船を降りるわけにはいかない。
ポケロケを担いで登山敢行だ!
ほとんど岩でできた急斜面を登ってきた~。若干展望が開けるご褒美だけど、景色が見れるのはここだけです 「日脚山」と書かれた標識。どうやらここが最高地点と思われます。正直、ルート選択に心の底から後悔したw しかし、下りはもっと凄まじい激坂で上りも下りも90%くらい担ぎでした・・・

誰だ!あんな看板つけたのは!!
ってまぁ、最初に気がついた時点で戻ればよかったのだけど(笑)

で、山道を下ったところには「日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)」という神社があるのですが、隠れた紅葉スポットらしく観光客が結構たくさん。山道をこなかったら見つけられなかったのでラッキー♪
境内もキレイなんだけど入口の階段の紅葉が素晴らしい! なんかこないだ行った伊勢神宮に似てるな~と思ったら、昔から「京の伊勢」と呼ばれている神社だそうです 境内の奥には「天岩戸」を模して作られた小さな洞窟があったりもします
棚ぼたで素敵な紅葉を堪能できました♪
日向大神宮をでて、さらに坂を下って行くと琵琶湖疏水第三トンネルの出口&蹴上のインクラインに到着します。
日向大神宮の前に3人の舞妓さんがいたので激写!山側ルートを選んでよかったw 坂を下ったところにあるのが琵琶湖疏水第三トンネルの出口 残念ながらトンネルの出口に近づくことはできませんが、三条實美の揮毫で「美哉山河(うるわしきかなさんが)=なんと美しい山河であることよ」か書かれています

残念ながら近くでみることができないのですが、第三トンネル出口に向かって右側には煉瓦造の「九条山浄水場ポンプ室」があり、左側からは琵琶湖第二疏水が合流しています。

九条山浄水場ポンプ室はもともと京都御所へ水を送るための「御所水道ポンプ室」として1912(明治45)年に竣工した建築物ってことで、こちらも100年ものですが今でも現役で活躍中~

琵琶湖疏水は京都の産業化に寄与するべく作られ、日本で最初の事業用水力発電を行ったわけですが、それがこの近くにある「蹴上発電所」。ここまで緩やかな高低差で流れてきた琵琶湖疏水は、水力発電のためにこの場所で大きな高低差を一気に下ることになります。

そこで困ったのが船運の皆さん。
蹴上発電所へ向かう琵琶湖疏水本流はパイプラインとなって流れが途切れてしまいますからね・・・

で、作ったのが「インクライン」。水路がないなら線路の上に船を載せて運んじゃおうよ的な設備(笑)
現在、琵琶湖疏水で船運は行われていませんが、当時使われていたインクラインが展示されています。 この線路の上を←の台車に乗せて舟を持ち上げたり下ろしたりしてたんですね~ こちらが蹴上発電所に向かう琵琶湖疏水本線。蹴上発電所は今でも現役で発電しているそうです。

さて、京都市内まで流れてきた琵琶湖疏水ですが、ここで本線と分線の二つに分かれます。
通常であれば本線をたどるのですが、今日のお昼スポットが分流沿いにあるため先に分線を巡ることにします。

蹴上のインクラインのところで本線と分かれた琵琶湖疏水分線は。南禅寺の境内を水路閣でまたぎ、若王子神社から銀閣寺付近まで「哲学の道」沿いの水路として流れたあと高野川・賀茂川をアンダーパスして流れて行きます。
蹴上発電所の水槽から分かれた分線。ここから先がすごく良い雰囲気の道なんですよ~ 森の中を勢いよく流れる琵琶湖疏水分線。護岸の苔むした壁が良い味出してます。 そしてたどり着くのは南禅寺の水路閣。残念ながら渡ることが出来ないので一旦下におります。

それで降りたらどうなっているのかというと・・・

ぬぉぉ!これはなんとも素敵じゃないですか!
総煉瓦造の立派な水路橋~
琵琶湖疏水の設計技師「田邊朔朗」の設計ポリシーは「建築物はすべからく、美しくなければならない」。確かにその通りだ! 南禅寺の紅葉とのコントラストがまた素晴らしい 坂を登るに従って橋脚が短くなっていく様子なんて、まさに芸術作品。

水路閣の建設当時は南禅寺の景観を壊すということで反対運動もあったそうですが、できあがってみればこの美しさ!当時の京都人達もきっと納得したのではないかと(笑)

ふと、疏水の右手を見るとなんだかキレイな庭園が・・・
どうやら南禅寺の中でも美しい回遊式庭園で知られる南禅院というところらしい。300円の拝観料が掛かるけどせっかくだからちょっと覗いていきましょう。
上にあがることは出来ないのですがこれぞ紅葉の京都って感じの風景じゃないですか? 庭園の紅葉が感動的なくらい美しい。自然の紅葉もキレイだけど、整備された庭園もまたいいものです 池に浮かぶモミジの葉も素晴らしい
うん、300円払った甲斐がありました(笑)
庭園は小さいのでゆっくり見ても10分くらいなのですが、ちょっと寄り道するには良い場所だと思います。
水路閣を渡った琵琶湖疏水は高徳庵のところで再びトンネルに。ここからしばらくは水路沿いを進むことが出来ません。 高徳庵の境内にもいい感じの紅葉が! 手入れされた芝生の上に舞い落ちたモミジの葉もキレイ~
南禅寺の中には南禅院の他にもいろいろ紅葉スポットがあるみたいなので、それらを眺めつつ琵琶湖疏水の流れを追います。
南禅寺本坊のところにあった立派なモミジ 唐破風の立派な大坊玄関 東山中学校野分を流れる分線のさらに分線。紅葉に彩られた急な坂を一気に流れてきます。
さて、ここまで琵琶湖疏水沿いの紅葉を楽しみながら走ってきましたが、忘れてはいけないのが「紅葉の京都には死ぬほど観光客がいる」ということです。蹴上までは穴場的な感じだったのでそうでもなかったのですが、南禅寺以降は大変なことになります。
紅葉スポットで有名らしい禅林寺境内。人が多すぎて奥に進むことが出来ないぞ~ 禅林寺の北側(哲学の道南端)で再び疏水と出会う。ここからは哲学の道沿いを流れて行きます 哲学者・西田幾多郎がこの道を散策しながら思索にふけったという哲学の道なんだけど・・・

人が多すぎて哲学どころじゃないよ・・・
哲学の道は禅林寺の北側から銀閣寺の辺りまでの琵琶湖疏水分線沿いに整備された遊歩道なのですが、紅葉スポットとして&京都の観光スポットとしても有名らしくとにかくすごい人・・・

静かな時期に来たら良い遊歩道だと思うのですが、今日は自転車を押しながら歩くので精一杯~
ホントは銀閣寺にも寄るつもりだったのですが、この人ゴミを見てサクッと諦めました。お寺はまた今度巡ろうw 銀閣寺へ向かう今出川通(101号線)を過ぎたら急に人がいなくなった。これで安心♪ 白川と交差する場所はサイフォンで立体交差!

銀閣寺を過ぎてからめっきり人が減って走りやすくなりました。
どうやらあの大量の観光客は銀閣寺→哲学の道→禅林寺→南禅寺というゴールデンルートを探索しているようですw

さて、人は少なくなりましたが疏水分線沿いには気持ち良い遊歩道がまだまだ続いていきます。
このまま一気に高野川まで・・・、と、その前に本日のお昼スポットに立ち寄りたいと思います。

本日のお昼スポットは、今や全国展開のラーメン店として有名になった「天下一品」の総本店!
昭和46年に創業者である木村勉氏が屋台一台で始めた店舗も今や213店舗!その大元である本店が京都にあると聞いては立ち寄らないわけにはいくまい(笑)
今出川通を離れて北へ向かう疏水分線。裏道に入ったのでますます静かな雰囲気~ そしてここが天下一品の総本店。といっても見た目は普通の店舗と変わりません。 総本店は店内でスープを作っているので他店とは味のレベルが違うという噂は本当か!?

答え:全然違います。
なんというのか、変に尖った味や風味を感じることなく、全体が非常にマイルドにバランスしている感じ。関東で食べるのと全然違うじゃん!

噂は本当だった!!

お腹がいっぱいになったら再び琵琶湖疏水分線沿いに戻って流れを追います。
この辺りはもうすっかり住宅街。紅葉もなくて普通の静かな遊歩道って感じです 京都市高野竹屋町付近で高野川と交差する疏水分線。サイフォン方式でアンダーパスしていると思われます。 交差部の南側にある高野橋から見る高野川の流れ。右側に放水口みたいのがあるんだけど、これって分線じゃないのか?

冒頭に琵琶湖疏水は京都の上水道として引かれたと書きましたが、もちろん今でも現役で京都の水道水の多くは琵琶湖疏水で賄われています。市内には蹴上浄水場、新山科浄水場、松ケ崎浄水場、山ノ内浄水場の4つの浄水場がありますが、高野川の右岸で琵琶湖疏水分線から取水しているのが松ケ崎浄水場です。

ひときわ目立つ形の配水槽が印象的な松ケ崎浄水場。一体なぜあんな形に・・・? 浄水場の脇を流れる琵琶湖疏水分線。ここもモミジがイイ感じだ~ 暗渠の出口。右側が高野川からの流れ、左側が浄水場からに流れと思われます。

あとで調べたら松ケ崎浄水場の中にはなにやら面白げな古い建物がたくさん有るみたい。寄り道するんだった!

松ケ崎浄水場を過ぎたらだいぶん水量が減ってしまい、ちょっと寂しい感じになります。
疏水分線は右下から左上に流れているはずなのですが、この交差部を見ると流れてきた水は左下の水路に向かっているような・・・? 北大路通の手前で再び暗渠になってしまいました 暗渠のまま流れは賀茂川と交差します。

地図によると賀茂川と交差した琵琶湖疏水の流れは紫命通~堀川通沿いに続いているようなのですが、日が暮れてきたので分線探索はここまでにして本線の方へ戻ろうと思います。

さらば琵琶湖疏水分線!

本線へは賀茂川沿いを南下していきますよ~
賀茂川沿いには未舗装ながら広々として走りやすい自転車道が続いています。快走快走~♪ 京阪出町柳駅のところで賀茂川と高野川が合流して鴨川になります。 そのまま川端通を南下し京阪川端通駅を過ぎたところで東西に流れる琵琶湖疏水本線を発見。

蹴上のインクラインのところで蹴上発電所へ向かった琵琶湖疏水本線は、平安神宮を取り巻くように流れたあと、この場所で鴨川へとたどり着きます。

ここで一部の水は鴨川へと放流されているようですが、残りは鴨川と平行しながら南へ流れて行きます。
下流部は帰りに見ることにして、まずはここから蹴上までの本線の流れを探検しましょう。
ちょっと登ったところにある夷川(えびすかわ)発電所。1914年竣工という煉瓦造の建物はなかなか重厚な造り 発電所の上流側は夷川ダムとなっていて大量の水が溜まっています そしてダムのそばにはこれまたキレイなモミジ。京都の紅葉はちょっとしたものでもすごくキレイなのは何故だ?
そのまま疏水本流に沿って東に向かうと正面に平安神宮が見えてきます。
疏水は平安神宮の敷地をぐるりと回り込むように流れて、南禅寺船溜まりへとたどり着きます。
平安神宮の敷地をお堀のように回り込んで流れる琵琶湖疏水本線。 朱色の橋と大鳥居が見えてきたよ。中も見たいけど時間がない! そして最も東側にあるのが南禅寺船溜まり。琵琶湖疏水の他に白川も流れ込んでいます。

蹴上のインクラインのところで台車に乗せて船を上げ下げしていたということを書きましたが、その下流側のターミナルとなっているのがこの南禅寺船溜まりです。よく見ると奥にインクラインに繋がる斜面も残されています。

また、船溜まりの隣には琵琶湖疏水記念館(入場無料)があり、いろんな物が展示されているようなのですが、この後ちょっと用事があり時間がないので苦渋の選択でスルー(T T)

代わりにインクラインの様子を見に行きたいと思います~
蹴上にもありましたが船を載せて行き来していた台車が展示されています。 「ねじりまんぼ」と呼ばれる総煉瓦造のトンネル「まんぼ」ではなく「まんぽ」ですw インクラインの上から南禅寺船溜まりの方を眺めてみた。微妙に夕方の雰囲気

↑の「ねじりまんぽ」、なんだか面白い名前ですね。
じつは「ねじりまんぽ」自体はここだけにあるのではなく、トンネル内の煉瓦が螺旋状に組まれている(ねじり)トンネル(方言で「まんぽ」)のことで日本のアチコチに「ねじりまんぽ」があるみたいです。

インクラインを下っている途中に見える建物。なんだか分からないんだけど、なんだか味のある建物ですね~ そして仁王門通を挟んで反対側に建っているのが蹴上発電所。日本で最初の水力発電車で、今でも現役稼働中! よく見ると建物の隣に大きなパイプが通っています。ここを疏水が流れているんでしょうね~

うんうん、琵琶湖疏水、すごい面白い!
120年前に作られた水路がそのままの設備を数多く残して今なお現役で稼働してるってのがすごい~

もっとゆっくり見たいのですが、そろそろ帰らなきゃいけない時間なので、琵琶湖疏水の下流部の様子を眺めつつJR京都駅に向かいたいと思います。
帰りは平安神宮の南側で琵琶湖疏水と分かれた白川沿いを鴨川まで走ります。 白川沿いには柳が植えられ、小さな人道橋などが掛かっててすごく良い雰囲気♪ 近くにある建物もなんだか「京都」って感じではないですか?
夷川発電所の西側で鴨川に合流して終了となっているようにも見える琵琶湖疏水ですが、実は暗渠になって鴨川と平行しながら流れています。なぜならこの下流でも「墨染発電所」等に利用されているから~。
琵琶湖疏水は鴨川と並行して走る川端通の下辺りを暗渠になったり、ときどき姿を現したりしながら流れています そして東海道本線の高架手前にある塩小路橋のところから再び開渠に。かなりの水量が流れています そのまま鴨川と平行して流れて行きますが、無念の時間切れ・・・。この先は一体どうなってるんだろう?

この先にも墨染発電所やら伏見インクライン跡(現存してない)やら旧伏見城外堀やら面白そうなものがあるので、次の機会にまた探検してみようと思います。

塩小路橋で琵琶湖疏水と分かれて西へ真っ直ぐ進むと、京都駅に到着。
本日のサイクリングも終了です。
おぉ、アレが有名な京都タワーか!? 京都駅前も観光客と地元の人でごっちゃり

スゴイや琵琶湖疏水!
そもそも京都自体がレトロな見所満載なのですが、琵琶湖疏水は水路マニア的にたまらん見所の連続~

思わずツーリングレポートが何時もの倍位の量になってしまったほど(笑)

また、さすがに京都の紅葉は素晴らしいですね~
市内は観光客が多すぎて自転車には不向きですが、疏水沿いにあった紅葉スポットみたいにちょっと外せば意外に空いてたりもするし♪

今回は市内の寺院などを殆ど見れなかったので、次は寺院巡りに来ようかな~。

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この記事へのコメント(6件) |コメント入力欄へ
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gen2010年12月 6日 06:38返信

渾身の力作ですね。最後までよくぞ力を抜かず書き上げましたね!

なんかinaさんこそ、転勤を目いっぱい楽しんでいるように思えるんですが(笑)

高崎からでも手軽に行ける事が分かったので、また行きましょうかね。自転車が運べないのが致命的なんですが。

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marty2010年12月 6日 21:42返信

水路橋と蹴上発電所の建物を見てみたい♪ genさんの書いている通り、転勤・単身赴任をこれだけ楽しめれば良いですね(笑) 後はスカイプ大活躍させないと(爆)

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カントリーキッチン2010年12月 6日 23:46返信

京都のツーレポありがとうございました。
私も一度は京都と走りたいと思っているのですが、今年もいけませんでした。
今ひそかに画策しているのが、名神・桂川サービスエリアにクルマを置いて
桂川から京都に行こう!なんです。
桂川SAにはウェルカムゲートはありませんが、従業員通用門はあるので、
これを自由に使わせてくれるかどうかが問題なんですが・・・この辺の事
どなたか、関西方面の方、お知恵拝借できませんか?
これが出来ると、名古屋→名神→京滋バイパス→名神でループで京都ポタリング出来るのです。

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ina2010年12月 7日 09:04返信

>genさん
今回は写真撮りすぎて、しかもどこも削りづらく久しぶりに長くなってしまいました。

また、こちらにおこしの際には遊んでくださいね~

>martyさん
どこにいっても何をしても楽しめるのが、僕の数少ない特技です(笑)

>カントリーキッチンさん
サービスエリアのことはちょっと分からないのですが、やはり国内有数の観光地だけあって京都はいいですよ♪

紅葉の季節の市内はメチャ混んでるけど。。。

これから寒い季節は若干すいている気がするので、自転車で散歩するならむしろいいかも?

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taku2010年12月 7日 22:30返信

来年か、再来年の秋に京都オフをやってほしいなぁ~

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ina2010年12月 8日 12:35返信

>takuさん
いや、今年には僕、関東に帰りますから(笑)
遠征でよければ♪

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